2025年6月、私は39年間在籍した日本光電工業を退職し、Medical Software Consulting(MSC)を個人事業として立ち上げました。あれから1年が経ちました。
振り返ると、この1年は「小さく、深く」という言葉がよく似合う時間でした。
"規格の答え"ではなく、"考える力"を
MSCの支援の基本姿勢は、最初から一貫しています。
IEC 62304もISO 14971も、Therac-25をはじめとする過去の医療機器事故から生まれた知恵の結晶です。それは認証のための形式ではなく、患者の安全を守るための実践の積み重ねです。
規格のテンプレートを渡せば、確かに書類は揃います。しかし、それではエンジニアは育ちません。人工呼吸器のような命に直結する機器には徹底的に厳しく、リスクの小さい機器には適切な水準で。リスクに応じて濃淡をつける誠実さ——それをエンジニア自身が判断できるようになることが、MSCが目指す支援です。
1年間の主な活動
この1年で、MSCは次のような活動を行いました。
コンサルティング・アドバイザリー 医療機器メーカーのサイバーセキュリティ規制対応(IEC 81001-5-1 ギャップアセスメント、SBOM調整、PSIRT体制構築支援)、規制変更申請のPMDA対応、ISO 14971・IEC 62366-1リスクマネジメント研修などを複数社で実施しました。
セミナー 情報機構・R&D支援センターを通じ、IEC 62304、ISO 14971、医療機器サイバーセキュリティをテーマとした対面セミナーを計3回開催。いずれも実務直結の演習を含む構成で、受講者の高い満足度をいただいています。
コンテンツ・情報発信 note「医療機器ソフトウェア規制コンプライアンス入門」全10記事(Phase 1完結)、YouTube解説動画(FDA QSMR・GPSV、アジャイル開発など)を公開。ブログ「組込みソフトウェア工房」は2006年から20年、約280記事の発信を継続しています。
MSC Regulatory Watch 正式公開 本日(2026年6月1日)、FDA・PMDA・厚労省・IEC/ISOなど11機関・157件を収録した規制情報データベース「MSC Regulatory Watch」を正式公開しました。週次自動更新・完全無料・日本語版・英語版の同時リリースです。詳細はこちらのPR Timesリリースをご覧ください。
これからのMSC
MSCは、大きくなることを目指していません。
年間2〜3件、深く関われる案件を丁寧に。単価を上げることはあっても、量を追うことはしない。それがこの1年変わらなかった方針であり、これからも変わりません。
「規格を使いこなす人を増やす」——この一点に集中することが、結果として医療機器業界全体の底上げにつながると信じています。
引き続き、よろしくお願いします。
Medical Software Consulting 代表 酒井 由夫